「初恋なんです。」
僕よりも15センチ近くも高い君がそう言葉を放つ。
突然の告白に体温がじわじわ上がるのを感じる。
聞き間違いだったらどうしよう、と心配になり聞き返した。
「ローランド、もう一度言ってくれるかな?よく聞き取れなくて。」
ローランドは顔を紅潮させ俯く。
あ、やってしまった。
僕は長い間恋人がおらず自信をまるで失っていた。
結婚どころか付き合うことさえ臆病になっていたのだ。
自信のなさから相手を戸惑わせた自分はなんて身勝手なのだろう。
「もう一度言います。
あなたが俺の初恋です。」
狼狽える僕とは対照的に彼は僕の目をまっすぐ見つめて、視線をそらさない。
「好きです、付き合ってください。」
まっすぐな言葉が突き刺さる。
「…僕も好きです。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
自分でも驚くぐらいに気持ちが自然と零れた。
「…嬉しいです。」
そう言って顔を手で覆って泣く彼の姿はまるで幼く見えたのだ。
「人間であるあなたとAIである俺では釣り合わないと思っていました。」
軍事用として作られた自分に感情を持ってしまったことに戸惑っていた。
しかもそれが特別な感情だったと自覚したときは、ひどく心が締め付けられた。
抑えるつもりだった。
言わないつもりだった。
そう震えた声で伝える彼に僕は
愛しい、と思う。
「キスをしてもいいかな?」
出てきた言葉に自分でも驚く。
しかし、そうしたいという欲望が溢れて止まらない。
「いいですよ。」
ローランドは目を瞑って僕を待つ。
それに応えようと頬にキスをした。
心臓が早鐘を打つ。
そのまま唇を重ねた。
その瞬間が切り取られ、世界には僕らだけが存在した。
君の初恋が僕だったように、僕の初恋も君だったら良かったのに。
せめて最後の恋を、今から。
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