思い出す、温もり。

 冬。


 手が悴んでまるで凍えてしまいそうだ。

 低い体温は戦場で死んだ仲間たちを思い出す。

 死を感じるから、俺は冬が少し怖い。


「ローランド!」


 誰からも愛される貴方が俺の目を見て呼ぶ。

 そうすると俺の外套にスッポリと収まる


「あったかいね」


 貴方もひんやりと冷たかったけれど、たちまち俺と貴方の体温が混じり合う、触れる。

 

 冬は死を感じる。

 けれども温かさを貴方と感じられるのなら、冬もきっと悪くはないかもしれない。


「監察官」

「なあに?」

「ずっとこのままでいたいです」

「あはは。そうだね、しばらくこのままでいようか」


 しばらく、ではなく永遠がいいけれども。


 そう呟きかけてやめた。

 これが瞬間の出来事でも、これはきっと永遠なのだ。

 思い出すたびに反芻される、この混じりあった体温。


「寒いな」


 監察官と離れて一度目の冬が来た。


 それでも、あの時の温かさを思い出して口元が緩むのだった。

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